白鳥の湖

 オレはオデット。

 悪魔ロットバルトから呪いをかけられている。

 昼は白鳥、夜だけ人間に戻れるけど、奴から逃げられないんだ。



 オレはこの国の元王子。

 呪いをかけられた時、たまたま王室の舎弟も連れていたので、彼らも同じ呪いにかかっている。



 ロットバルトは男。

 ハッキリ言ってゲイだ。

 オレを独り占めしたくてこうなったらしい。

 まあ、オレの見た目は評判がいいけどな。

 男はごめんこうむるんだ。



 オレは毎晩襲ってくる奴を、足で蹴倒して暮らしている。

 そのせいで奴は生キズが絶えないんだ。やめればいいのにね。



 ある夕暮れのこと、オレはいつものように舎弟を連れて、湖でダラダラ毛づくろいをしていた。

 無職だからな。

 それしかすることないんだよ。

 すると突然、矢が飛んできた。

 野蛮な男が子分を連れて狩りをしていた。



 オレはキレたね。

 ちょうど日が落ちて宵の刻を迎えた。

 オレは人間に戻って湖からあがった。

 舎弟を代表して文句言ってやったよ。

 「あにすんだよ!」



 野蛮な男はオレを見て、一言叫んだ。

 「惚れた!」

 男は国賓として狩りを楽しんでいた隣国の王子だった。

 ジークフリートって言う。

 こいつもゲイだった。




 オレはジークに結婚を申し込まれた。

 彼はオレを舞踏会の日に呼ぶと言った。

 みんなの前でカミングアウトと婚約発表を同時にしたいんだそうだ。



 オレの呪いは人間の愛で解けるようになっている。

 オレの呪いが解けたら舎弟も助かる。

 まあいいか。

 オレは自由になりたいし、舎弟の面倒をみる責任もある。

 ゲイと結婚した後、3秒で離婚すればどうとでもなるな。



 オレは舞踏会の日の夜、城に出向いた。

 でもロットバルトの方が手をうつのが早かった。

 奴の息子のオディールが、オレに化けてジークに近づいた。

 だまされたジークはオディールと誓いのディープキスをかましやがった。

 観衆はげっそりしてた。

 又ゲイが出た!



 オレは絶望したね。

 もう嫌だ、こんな物語。

 敵も男なら味方も男。

 舎弟も男。

 男だらけで何しろってんんだ。



 うっとおしいことにジークも絶望したらしい。

 相手がオレじゃなくてオディールだって気がついたんだ。

 ジークはオディールを追っ払って、ロットバルトに決闘を挑んだ。

 負けた。弱い。うっとおしいだけ。



 いーから女性! 

 女性どこかにいないの?! 

 オレは夜の森で女性を探している時に、崖から滑落してしまった。

 敗れたジークも余計についてきた。

 お前、降ってこなくていーから! 



 オレは崖の斜面を転がり落ちてる時にジークと絡まってしまって、もみくちゃになっておっこってった。

 こーいうの、ヤロー地獄って言うんだよ。

 もう助けて! 

 女性出して! 

 どこかに女性落ちてないの?!


(終わり。すまんな)