信長

 人生五十年、人生五十年

 生き延びてしまった、五十一年



 オレはマグロだ。泳いでないと死んじゃうんだ。

 前しか見ない。猪と同じなんだ。

 何したらいいんだ。茶でもすするのか

 そんなジジむさいことできるか!



 禅の世界でバンド率いてパンク歌ってやる

 神は信じない。坊さんは全員ビジュアル系にメイクする。

 みんな俺についてこい。



 歌ってやるぜ。歌ってやるぜ。暇ぶっこいてないでついてこい。

 女の子の黄色い声の中にダイブするんだ。ビバ男のロマン。

 人生五一年、人生五十二年。オレはマグロだ。ずっと戦う。

 


 恐るるは五十肩と腰痛の妄執、

 恐るるは関節痛と老眼の妄執、

 恐るるは毛根たちとの別れ



 年に立ち向かって戦い続けた。

 眼前には乾いた風が吹きすさぶ

 真っ赤な塵が舞い上がる。

 


 オレは陸のマグロだ。走り続けて華と散る

 討ち果されるその時まで、天下は、天下はオレのもの。


(おわり)