お姉ちゃん

 お姉ちゃんは僕からアイスクリームを奪っていった。

 お姉ちゃんは僕のポテチも奪っていった。

 お姉ちゃんが僕のおねしょパンツを奪っていって、お母さんの前でさらしものにしたときははらわたが煮えくり返る思いだった。

 



 お姉ちゃんは僕の分度器も三角定規も奪っていった。

 僕とサイズが違うのに上履きまで取ってった。

 僕が中学に進級すると、初日から僕のジャージを奪ってケラケラ笑ってるんだ。

 


 

 翌日は僕の制服の第二ボタン。

 次は新しくできた僕の彼女を友達と言って吸収していった。彼女は返ってこなかった。

 次は僕の友達が吸収される。

 全部吸収していくお姉ちゃん、一体何が言いたいんだ。


 



 お姉ちゃんは花の18歳。町中のものを欲しがりすぎて最後にブラックホールになってしまった。

 今、大気圏を突破し地上のすべてを飲みこもうとしている。

 




 地球防衛軍が大砲を撃ちこんでるけど、お姉ちゃんはびくともしない。

 僕は防衛軍の後ろで叫んだ。

 「お姉ちゃん、一体何が欠乏してるんだ。僕が全部あげるよ!!」





 その時、お姉ちゃんはブロックホールから人の姿に戻った。

 ゴスロリルックで空に浮いて尋ねるんだ。

 「今の本当?」

 「撃て!!」

 その時隊長の指示で地球防衛軍がお姉ちゃんに大砲をお見舞いした。





 お姉ちゃんは額に大砲を受け止めて「キェェェェェ!!」と叫んで撃墜されていった。

 人間に戻っても悪魔みたいなやられ方してんの。さすがはお姉ちゃん。





 僕は撃ち落されたお姉ちゃんのところに駆けよった。

 お姉ちゃんは地面にクレーターができた真ん中で全身焦げた格好であおむけに倒れて僕をにらんでいた。

 「さっきの本当?」

 「本当だよ」

 「じゃあ、愛を頂戴」

 「いいよ」





 お姉ちゃんは大砲を食らってもおでこにあざができただけだった。

 僕は翌日彼女の要望でシャンプーをしてあげた。

 お姉ちゃんは額にバンソーコーをくっつけてずっと笑っていた。

(終わり)