(第一話)
乙姫様は冷たい方《かた》でした。
浦島太郎は乙姫様にチョップをくらわせます。
怒った乙姫様は、ビンタで太郎を迎撃します。
二人で大喧嘩になりました。
乙姫様は太郎を肘鉄で撃沈した後、「さびしかったの」と言いました。
太郎は「早く言え」とツッコミました。
暴力に頼る人間は、男も女も最後に本音を吐露します。
最後じゃ遅いんだと太郎は教えました。
乙姫様は反省しましたが素直になれず、しゃがみ込んで竜宮城の海藻をむしっては捨てむしっては捨てします。
その後ろから太郎はたずねました。「友達になろうか」
(第二話)
乙姫様は冷たい方でした。
友達になってくれた浦島太郎のために、召使をこき使って、側近だった本マグロをディナーにしてしまいました。
「ダメだろ!」と太郎はツッコミました。
乙姫様はたずねます。
「どうやって優しくしたらいいの」
乙姫様は甘やかされて育ったでしょうか。
乙姫様に家族はいません。
何か教えてくれる人はいません。
乙姫様の食事の作法は、それはもうひどいものでした。
どんなに作法が悪くても、魚たちは彼女を恐れて寄り付こうとしません。
従うだけでした。
見かねた太郎は、彼女を陸まで連れてゆきます。
そしてまず、自分の家族を紹介しました。
乙姫様は最初キンチョーしてカチコチでしたが、じきに彼女らしくワガママになりました。
ツッコミを入れるのはもう、太郎だけではありません。
家族と友人で彼女にツッコミを入れました。
乙姫様はワガママなままでしたが、暴力に頼らなくなりました。
「何で」と太郎が聞くと、乙姫様は答えました。
「さびしくないから」
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