デキる女の靴

「えー、落としちゃったの?」

シンデレラは、ガラスの靴を舞踏会の日に落として来てしまった。

「駄目じゃない。あれはあなたに合わせたデキる女の靴よ。他の人は履けないの」

「ごめんね。魔法使いさん」




舞踏会で会った王子は何を思ったのか、その靴に合う女性を探し、王妃にするというおふれを出した。

「まあね、靴を返してもらえる上に、王妃様になれるなら儲けもんでしょう。行ってらっしゃいよ。シンデレラ」

「うん、ありがとう」




シンデレラは、魔法使いに背中を押され、靴の試着者の中に参加する事にした。

国中の女性が靴を試着したが、合わなかった。シンデレラが履く番が来た。靴はピッタリ合った。




王子は釈然としない顔をしている。

「君、シンデレラ?」

「うん、そう。シンデレラ」

「靴、脱いでみて」

「いいよ」

シンデレラが靴を脱ぐとお腹の肉が三段になり、巨デブの女性になった。




王子が再び注文。

「履いてみて」

シンデレラが靴を履くと、突然モデル体型になった。




「魔法のアイテムだったのかー……」

王子はガックリ肩を落とした。

「王子様、この靴、私のだから、返して欲しいんです」

「ん……別にいいよ……」

王子はしょんぼりして、臣下と一緒に城に帰って行った。




シンデレラは自宅に帰る。魔法使いが待っていた。

「フラれちゃった」

「見た目で判断する男なんか、ほっておきなさい」

「悔しい」

「大丈夫、これはデキる女の靴よ。履いてる内に本当にデキる女になるから」

「本当?」

「本当よ」

「絶対よ。絶対デキる女になるんでしょうね」

「絶対なる」

魔法使いはそう言い、靴を置いて去って行った。




シンデレラはフラレた悔しさのあまり、ボクササイズを始め、数年後、本物のスレンダーになった。そして書いた物語がヒットしてしまい、ベストセラー作家になる。





彼女が街を歩いていると、太った若い女性が、同じ女性達に「デブ、デブ」いじめられていた。シンデレラは彼女を呼んで仲良くしたあと、ガラスの靴を差し出した。

「これね、デキる女の靴よ。あなたにあげる。持ち主にピッタリになる。履いてると本当にデキる女になるから。きっと幸せになれるよ」

(終わり)