王様は魔法使い

 王様の耳は化け狐の 妖狐のその耳

 西洋、東洋、撹乱した狐の

 王様の羽は天狗の羽 天駆ける天狗の羽

 風切る風切る有識者の羽

 彼が笑うその時に

 億千のイルカ恋に落ち

 病持ちも再生の道を歩き出す


 


 王様は魔法使い 鮮やかに七変化

 聖に扮して抱きしめる 女子供達を

 地獄の獣に扮し 非情な裁きを下す

 次に修羅に扮したら 無敗の戦びと

 



 王様の声はサイレンの声 美しいサイレンの声

 男も女も虜にするその声

 第三の瞳エメラルド 時によってはホライゾンブルー

 七つの海と波長を合わせる瞳

 彼の眼が射抜くならば

 彼の手が触れたならば

 猛獣も猫になる 火は水になる




 王様は魔法使い 鮮やかに七変化

 魔神に扮して連れてゆく 誰でも夢の中

 ジョーカーになればトリッカー 天の邪鬼で憎めない

 鳥に扮せばかっさらう 塔の上の姫を




 王様は変身なさる 

 女のようにルージュを引いて

 女のように睫毛を伸ばし

 とんぼをきる

 王様は変身なさる

 女のような耳飾り

 女のような足飾りして

 女のように踊り出し

 女よりも蠱惑的

 眩しすぎ 女とは一線を画する




 もし彼の変身が 叶わないのならば 

 空の男が居るだけで 一人も愛せない

 だから彼は無敵で 誰よりも美しい

 そしてどんな姿とて 正体にあらず




 王様は芸術家 

 女のようにルージュを引いて

 狐よりも美しく転身する

 何色にも染まる役者 

 どの舞台も支配する

 狐よりも席巻する芝居うち

 王様のご気性は

 装いによって異なるし

 悲しいか寂しいか 僕にはわからない



 王様は芸術家 焼けただれた顔してて

 まじない師の僕を小突いてく 出かけるその時は

 傷の無い僕の顔が 少し憎らしいのか

 どこかに痛みがあるだろうか おくびに出さないが




 王様は芸術家 

 女のようにルージュを引いて

 狐よりも美しく転身する

 その素顔を知る僕を 

 よくからかって遊ぶ

 気を遣うと彼は笑い出す

 ただ顔の話だけは

 「誰にも言うな」と戒めて

 颯爽と公務へと今日もとんでゆく




 王様は芸術家 焼けただれた顔してて

 まじない師の僕を小突いてく あばよも言わないで

 傷の無い僕の顔が 少し憎らしいのか

 どこかに痛みがあるだろうか おくびに出さないが




 王様は芸術家 焼けただれた顔してて

 まじない師の僕を小突いてく あばよも言わないで

 王様は魔法使い 本当は違うけど

 本物より本物らしい 王様は魔法使い


譜面

王様は魔法使い
王様は魔法使い

うんちく

 まじない師はシャーマンで表現される時もありますね。

 舞台はアジアの温暖な国で、古代ではありません。


 ストーリー中の「僕」は宮廷医師です。

 政治権力は持ってません。

 「僕」の医療には科学的根拠がありますが、周囲からは神秘の技を使っていると思われています。