僕は君の宮廷のつかい
君の青い翼 魔法使い
過去に同じ剣の前で 君と誓った
君は真っ青な唇で
魔法の薬 よこせと言った
危機にひんす 国のその君主
手段など 君はいとわない
最後の頼りは 魔法の薬だ
あおれば 世界も滅ぼせる
ただしヒトに戻ることなし
狂気だけの余生送るだろう
製法知るのは僕一人 国で僕一人
僕は君の宮廷のつかい
君の青い翼 魔法使い
君はこの僕 信じている 唯一僕だけを
「覚悟は出来てる」 君は言う
君の青い肌 透き通り
プライドの 塊みたいで
艶やかな 白蛇の如し
最後の君主は こういったものか
それでも 僕は断った
これが薬か 否 猛毒だ
君に渡せば君を失う
僕は退路と拒否権を取られ、どこにも行けない
君は支配の鬼となった 君の本気に誰も逆らえない
でもさ、君の心の中は傷ついてるんだ
君は「背くな」と僕に言う
まるで大輪の青い薔薇
衛兵が 僕を取り押さえ
猛毒を 取り上げかかった
呪文は 別れと 悲しみのしるし
その時 僕は裏切った
僕は涙で竜巻になり
君の前から姿を消した
君は傷から殺意に変わり 僕を追った
君は真っ青な くちびるで
火矢の雨降らし 迫り来る
逃避行の 道は苛烈なり
凍てついた 大地が泣いてる
炎蛇と白蛇が空で笑ってる
それでも 僕は戻らない
秋も冬でも僕は走る
君の命で大砲が唸る
騎士団 幻獣を駆り立て 僕を狙った
ドラゴン 僕の腕もいでゆく
隻腕になり 僕は走るが
力尽きる時が来たり 僕はこれまでか
君は真っ青な くちびるで
僕の目の前に 仁王立ち
僕は矢で 串刺しに遭って
君の命で 今やハリネズミ
愛する君主に 僕は膝をつく
これ以上 君から逃げられない
君は静かに勝ち誇ってる
己 捨てて 国を取る男
僕は君に泣き笑いした あまり眩しくて
僕はあくなき 魔法の司
腕の中の毒と一体化
毒を持たない花になる 僕のうた ラスト・ショー
僕の全力の 魔法劇
君は声もなく 立ち尽くす
花のそば 数百の矢じり
僕の背を 貫いてたもの
肉体捨て去り 苦しみは過去に
僕は 最後まで裏切った
僕の愛し青薔薇の君
君を慕い永久《とわ》を生きてるよ
大地 空と風に抱かれて 君を見てるよ
たとえ僕を捕らえたとして
君の手には入らないだろう
毒を消し去った花のうた 僕のうた ラスト・ショー
ギリシャ神話から。ゼウスが求愛した女性達がみんな花になってしまうエピソードを題材にしたものです。ヤロー同士だとこんな話になりました。文化背景のイメージは、古代ギリシャではありません。
“抜け”を雰囲気作りの小道具にした作品です。長いので小説化しようと考えたこともあります。しかしその場合、
①国がさらされている危機とは何なのか?
②『僕』は国を救える唯一の毒を無効化してしまったが、その後、国はどうなるのか?
という所を作り込まないといけません。嫌です。イメージ優先の話にしたかったんです。
歌には歌の長所があります。歌なら『あたしってこれからどうなっちゃうの?』ってくだりで終わっても、十分盛り上がります。解決しなくていいんです。そこが書いてて楽しーんです。今回はそんな作品でした。
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