「マッチ一箱、一箱だけいりませんか」
少女が裸足でマッチを売る
雪がしんしん降る中、裸足で
通行人はマッチなんかに目もくれない
売れなきゃ父親に殴られる
少女はその声を張り上げた
「一箱どうでしょう」
彼女には誰もいない カケスがカラカラ
そこへやって来たは おかしなジェントルマン
大金持ち 満タンの金入れ
黒テンの コートで現れ
佇まい 影法師
「お父さんは好きかい」紳士が彼女にたずねた
彼女は真っ赤に顔を染め「大好きです」と紳士に言葉を返した
「仕方がないね」紳士は低く呟いた
「ブーツを履きなさい。寒いから」紳士の施しはそれだけで
二人に列車の爆音が迫ってる 彼女のドキドキ
そして大時計が 鐘の音鳴らして
冬の花 こぼれんるほど咲き
北風が その時、どうと吹き
今起きた 黒テンの目
「これを持っていなさい」
紳士がおもむろに言って
彼女にバケツを差し出した
マッチ一箱、一箱買わずに
黒テンのジェントルマン
無言でその場を立ち去った
バケツを持ったマッチ売り
回りの人々が目をむいた
カウントダウン 完売まで
「おれのだろ」「あたしのよ」押し合う人、人
そしてマッチ売りは いさんで帰った
その親は 度肝を抜かれる
「そのバケツ、父さん預かるよ」
「嫌です」と無邪気な娘
「バケツを持ってるとマッチがバカバカ売れるの」彼女は笑顔で眠りつく
夜の深い内に、あわくってバケツ捨てる親
翌朝からは彼女は彼にぶん殴られた
いつもとかわりなく家を出て
やっぱりマッチを売る彼女
「一箱どうでしょう」
そしてまた 黒テンの紳士が出た
彼はおもむろに バケツを差し出す
影みたく フラリと立ち去る
そのあとは バカ売れするマッチ
完売まで 十数分
彼女の父親 今度も度肝を抜かれる
バケツと彼女が帰宅した
眠りつく彼女と あわくってバケツ捨てる彼
翌朝からは 彼女は彼にぶん殴られた
いつもとかわりなく家を出て
やっぱりマッチを売る彼女
「一箱どうでしょう」
そしてまた 黒テンのヒーローが出た
殴る父親と 真逆のことする
そう連日 彼女に贈った
おもむろにバケツを一杯
マッチひとつ 買わないで!
彼女がバケツを片手に帰宅するたび、保護者の彼は恐怖した
「父さん預かるよ」腰の低い彼だが、破顔する彼女「いいえ、私が持ってます」
毎晩父親が処分する
毎晩ブルブルし、そのバケツ
マッチ売り、日に日にキツくなるガソリン臭 ヒーローは出る
彼は魔法使い ガソリンを持って来る
その影は 翼を持ってる
マッチひとつ 買わないヒーロー
もう寒くない 彼がいる
マッチ売りの少女をハッピーエンドにしてみました。福祉的に考えると勧善懲悪にはできません。
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