僕とドラゴン

 カレーライスをめぐって、僕とドラゴンとで取り合いになる。

 ドラゴンと言っても巨大な赤ちゃん。現在トイレトレーニング中でおむつが取れてない。

 僕はドラゴン調教師見習い。

 訓練のために一緒に住んでる。



 カレーライスをめぐって、僕とドラゴンとで取り合いになる。

 お前、毎日、肉5キロ食べてるだろ!

 カレーは人間の食べ物だ。

 取っ組みあった結果、僕がカレーライスをゲットした。

 僕がカレー食ったら、ドラゴンの奴、おいおいおいおい泣くんだ、これが。

 いいか、カレーは人間の食べ物だ。

 それでもドラゴンは聞きわけない。

 おいおいおいおい泣くんだ、これが。



 しかたない。

 僕はドラゴンのためにカレーを作る。

 人参むいて、じゃがいもむいて、玉葱むいて、まな板の上でトントントン。

 泣くなよ。

 キノコも入れてやるから。

 玉葱だって飴色にしてやるよ。



 わかったよ。

 肉がなきゃだめなんだろ。

 特大のサイコロ状に切ってやるよ。

 特大のフライパンで具材をじゅうじゅう炒めて、やっぱり特大の鍋で大量の具を煮込んでやるから。



 トマトを入れるか、ココナッツミルクを入れるか迷ったが、お前赤ちゃんだから、ミルクの方がいいんだろ。

 僕はおおざっぱなタチだから、原料から作るわけじゃない。

いいころあいで、カレーのルーをぽこんと入れて、ぐつぐつ煮込む。



 そんなに泣くなよ。カレーぐらいで。

 ほら見ろ。具がとろとろになってきた。

 カレーができたらふわふわのご飯にとろりとかける。

 ほら、これが欲しかったんだろ。



 ドラゴンが泣きながらカレーを食べる。

 ぼくんちのドラゴンはカレーを食べる。

 ぼくも一緒にカレーを食べた。

 僕がドラゴンの鼻面をなでると、ドラゴンは僕の顔をべろりと舐めた。

 カレー味がする舌だった

 


 わかったよ。ごちそうさまって言ったんだろ。

 そうか。おいしかったか。

 明日はめそめそ泣くんじゃないぞ。

 僕はドラゴン調教師見習い。

 ドラゴンと一緒に住んでいる。