報道とエンジェル

はじめに

キャスターとアナウンサーの違いがわかりません。プロデューサーが何の仕事してるか、知りません。報道界を取材しないで、脊椎で書いてしまった、超恥ずかしい作品です。



でも思い出深いのでそのまま残しました。うん、自分、未熟でした♡すんません。


1-1

若いキャスターの舞は、視聴者参加型番組“情報クローズアップ”で人気に火がついた。次々と仕事が舞い込んで来て忙しい日々を送っていた。




 夏の盛りの時期に入る。子供たちがデビューしたての鉄道新型車両“ひまわり”に夢中になってる時、東京で女性が夫を殺すDV事件が起こった。数日間、TVはこの話題でもちきりになる。情報クローズアップでも、出演者が真剣に語り合った。





 「女性が暴力を振るうなんて」

 「信じられませんね」

 「男性被害者は逃げられなかったのですか」

 解説側が答える。

 「犯罪被害者というのは、逃げられない心理に追い込まれるのです」

 「なるほど、いたましいですね」




 翌週、舞は控え室に入り、放映直前の原稿チェックをしていた。今回の記事は男性のDVで女性が死亡したもの。舞が一息入れるため、ブルーハワイのドリンクに手を伸ばした時だった。




 番組プロデューサーの深田がやって来た。もじゃ髭の中年だがベテランである。

 「舞さん、緊急で新しい記事に変えて欲しいんだ。スーパーお得丸の最新情報!」

 「でも、DVの方が問題ではないですか?」

 「そんな記事ありふれ過ぎてて読む価値ないよ。女性が加害者だったらトップ記事にするけどね! 最新記事をよろしく、舞さん!」




 深田はいつも仕事に追われて忙しい。彼は控え室から出て行った。舞はその日、お得丸の記事を読んだ。

 (続く)





1-2

【1ー2】


 翌週、舞は控え室で放映直前の原稿をチェックしていた。甘さをおさえた夏みかんドリンクで気を引き締める。今回も男性のDVで女性が亡くなった記事。そこへ深田がやって来た。




 「舞さん、新しい記事に変えて欲しいんだ。友田先生がマーベル賞を受賞したよ!」

 「でも、DVは重要ではないですか?」

 「そんなのちまたに溢れ過ぎてて誰も聞かないよ。女性が加害者ならトップ記事にするけどね!」

 舞はその日、友田教授の記事を読んだ。





 翌週も舞のもとにDV記事が入る。加害者男性によって女性が亡くなった。舞は夏色の襟元を正して放送に挑む。今回イレギュラーな事態は起こらなかった。出演者達が語り合う。




 「本当にいたましいですね」

 「被害者の愛美さんは逃げられなかったのですか?」

 「本当に逃げられなかったのでしょうか。今、警察が事実確認をしているところです」

 舞は原稿通りに結んだ。

(続く)


1-3

【1ー3】


 翌週、DV被害者の男性が情報クローズアップに協力してくれることになった。舞は後輩のキャスター愛梨と組み、細心の注意を払って取材に挑むことになる。




 取材中に愛梨が失言した。

 「どうして逃げられなかったのですか?」

 「愛梨さん、被害者を責めてはいけません」

 「申し訳ありませんでした」



 愛梨が素直に反省して事態は丸く収まった。舞は番組内でも視聴者からも『やっぱり舞がいないと回らない』と高く評価されることになった。




 翌週、DV被害者女性、みなみが番組に協力してくれることになった。今度は舞の単独インタビュー。みなみは逃げも隠れもせず、堂々と応じた。舞は訊ねた。

 「どうして逃げられなかったのですか?」

 みなみは口を閉ざした。

 「どうして心を閉じてしまうのですか?」

 その日、インタビューは上手くいかなかったが、舞の追及姿勢が高く評価された。

 (続く)


1-4

【1ー4】


 舞は昼休み中、買い物に出た。付き人の立川が止めたが、だて眼鏡をかけたら誰も自分だとわからない、と説明して振りきってしまった。




 お弁当と飲み物を買いにコンビニに入る。おやつに特大のしろくまを見つけ、ほくほくして店を出た時だ。

 「すみません。TVハヤテまでどう行ったらいいか、ご存じですか」




 若い青年が道に迷って困っていた。舞はにっこり笑った。

 「私もそちらの方に向かいます。ご案内しましょう」

 「ありがとう、おねえさん」




 二人はコンビニについてる駐車場前を通り、公衆トイレにさしかかった。すると彼は彼女を乱暴に抱え、引きずるようにトイレの裏に連れ込んだ。




 彼はお弁当を取り落とした彼女を建物の壁に張り付け、懐から出した刃物を突きつけた。

 「キャッシュカードを出せ」

 「誰か・・・」

 「騒ぐな。きれいな顔を切り刻むぞ」





 彼女は戦慄した。誰も来ない。

 「キャスター舞、何億も稼いでるんだろうな」

 「違う」




 その時だった。彼女の目では確認しづらい、細いものが飛んで来る。犯人の首に巻き付いたのを見ると、鞭だ。近くに使い手がいる。




 犯人は鞭ごと引っ張られ、転倒した。鞭の使い手が滑り込んで来て、犯人にきつい蹴りを見舞い、刃物を蹴飛ばした。犯人はうめいたまま起き上がれなくなった。

 



 「舞さん、怪我はない?」

 「あなたは天使!」

 鞭の使い手は、眩しいほど整っていて、若くストイックな容姿の青年だった。一般人と同じ服を着ているが、天使かどうかは見ただけでわかる。




 「僕はラディ。用があって降りてきた」

 彼はそう言って鞭を持ち手のところから外し、ロープ代わりにして犯人を縛った。柄の方はズボンの太ももに仕込む事ができるようだ。




 ラディは舞のお弁当を拾って渡してくれた。そして公衆トイレの前に出て行き、ぽっちゃりした中年サラリーマンを呼びとめた。

 



 「お兄さん、警察を呼んでください」

 「うわ天使」

 「ラディです」

 サラリーマンはラディの後ろにくっついていた彼女を見て声をあげた。

 「うわキャスター舞! 何て完璧な組み合わせなんだ」




 ラディは言った。

 「刃物男を捕まえたんです。お兄さんに助けて欲しい」

 「わかった、ラディが言うなら」




 キャスターが襲われたとなると人に囲まれて大スクープになるところだったが、ラディは舞のために少々細工した、と言った。




 舞に気がついた一般人はラディが助けを頼んだサラリーマン豊田だけ。三人一緒に警察に協力したが、そこでも取材陣が押し寄せることはなかった。




 三人は夕暮れ時に解放され、帰り道で解散することになる。縁日の屋台が真っ赤なリンゴ飴を並べている。豊田は舞の大ファンでサインを欲しがった。交差点で名残惜しむ豊田と別れることになる。




 舞はラディと二人きりになった。彼は言った。

 「情報クローズアップ拝見してるよ。とても興味深い。僕、舞さんにお話があって来たんだ」

 「なあに」




 お面をつけた小さい子供がヨーヨーを振って浴衣女性のところへ走って行く。ラディは舞に訊ねた。

 「あなた、女性は嫌いですか」

 「いいえ。私はキャスター、女性の権利のために戦いたいの」

 「じゃあ聞きます。どうして女性の分担ばかり考えるの?」




 舞ははたと考えた。ほんの一瞬、これまでのDV事件を振り返っていたら、ラディはいなくなっていた。浴衣の男女の涼やかな姿。わたあめ屋から祭りのしらべ、店主の景気のいい声ーー。

 (続く)



2-1

【2ー1】


 翌週の番組放送直前、舞は原稿を読んでいた。内容は、女性がDV被害で亡くなった話だ。そこへ深田がやって来た。




 「舞さん、新しい原稿に変えて欲しいんだ。女性のDVで男性が亡くなったよ。大事件だ」

 「いいえ、私は女性が亡くなった記事を読みます」

 「そんな事件、つまらなくて視聴率とれないよ」

 「どうして男性が被害に遭った時だけ擁護するのですか」




 舞は自分の言い分を押し通し、番組内で女性がDVで亡くなった記事を読んだ。コメンテーターが言った。

 「悲しい事件ですね。女性は逃げられなかったのでしょうか」

 「どうして被害者の分担を考えるのですか」



 舞が訊ねるとコメンテーターは静かになったが、参加している一般視聴者女性側の中で発言する者が現れた。

 「だっておかしいでしょ。被害者は逃げればよかったんだ」

 「そうだ、私ならとっくに逃げてる」




 舞はたたみかけた。

 「あなた方女性でしょう。どうして同性を攻撃するのですか」

 「だって理解できない」




 言い返す視聴者は舞と同い年くらい。女性らしい曲線美の持ち主で、蝶々の髪飾りも大胆なスリットの入った膝下タイトスカートもセンスが際立っており、デザイン学科の卒業生のように見える。




 舞が訊ねる。

 「男性が逃げられなくて亡くなった時は」

 「それは女性が悪かったの」




 その時、男性視聴者側の席で誰かが立ち上がり、センスのいい女性視聴者に訊ねた。

 「女性が逃げられなくて亡くなった時は」

 「それは女性が悪かったの」




 立ち上がった男性は舞の方に歩いて来る。彼はやりとりした女性視聴者に訊ねた。

 「あなた名は何というの」

 「春菜」

 「そうか、いい名前だ、春菜さん」

 「ラディ」

 舞は彼が天使だと気がついた。

 (続く)



2-2

【2ー2】


 春菜を筆頭として、番組に参加している女性視聴者が舞とラディに異論を唱えた。

 「どうして被害者は逃げなかったんだ。おかしいじゃないか」

 「被害者が悪い」

 「そうだ、女性は女性が憎い」




 撮影の真っ最中に裏方の深田が舞のもとに駆けて来る。まるで出演者のように発言した。

 「舞さん、一大事件だ。女性のDVで男性が死んだ! 記事を読んでくれ」

 「いいえ、私は今の記事を扱います」

 「どうしてだよ。男性が死んだんだぞ! 一大事件だぞ!」




 信じられないといった様子の

深田に、舞は反論した。

 「女性が死んでも一大事件です」

 「逃げなかった女性が悪いんじゃないか!」




 深田は語気を荒くした。舞は取り乱すまいと言い返す。

 「では逃げなかった男性も悪いのです」

 深田は歯をむいた。 

 「男性が死んだ時は事件なんだ!」

 「女性が死んだ時は」




 「自己責任だよ! 男性が加害者の時は仕方なくて、女性が加害者の時は怪物と決まってる! 春菜みたいに男に疑問を持たなかったら可愛がってやるって言ってんだ。早く怪物の記事を読めよ!」




 舞は自分がどこか亜空間にいるような感覚を味わった。プロデューサーの深田がメインキャストのように怒り狂っている。それを誰も疑問に思わない。男性視聴者が総立ちで深田に同調した。

 「女は怪物」

 女性視聴者が総立ちになる。

 「女は怪物」

 両者が口を揃える。

 「舞、怪物の報道をしろ!」

 (続く)



2-3

【2ー3】


 舞は誰かが自分の肩をつかむのを感じ、振り返った。深田が立っていた。彼は笑ったが、歯列は肉食獣のそれだった。

 「舞、怪物の報道をしな」





 舞は身体を振りほどいたが、逃れた所にコメンテーターが立っていた。彼が笑うとやはり歯列は肉食獣。

 「舞、怪物の報道をしな」




 コメンテーターがうねうねと身体を揺らしたかと思うと、もう彼は人間ではなかった。水っぽい漆黒で塗りかためられ、足の溶けた巨大ミーアキャットのようなものに見える。肉食獣は歯列から唾液をどろどろと垂れ流してしていた。

 「舞、怪物の報道をしな」




 舞はマイクを降りかざして肉食獣に一打を浴びせた。肉食獣は上半身まっぷたつに裂けたが、すぐに再生した。

 「舞、怪物の報道をしな」




 視聴者の席も番組裏方側も、肉食獣の群れで埋め尽くされていた。彼らは四方からずるずると舞に近づき、周辺を固めていく。





 その時だった。舞の目では確認しにくい細いものが飛んで来て、肉食獣の一体に巻き付いた。すぐ引っ張り戻す力が働き、肉食獣が飛んだーー飛んでいないものもある。もとの場所にコメンテーターが残され、彼から分離させられた肉食獣は地面に叩き落とされた。




 次の鞭が繰り出され、深田に巻き付いた。そして彼からも鞭に巻き込まれた肉食獣が分離し、地面に叩きつけられる。舞は声をあげた。

 「ラディ!」

 天使の鞭だ。





 舞は訊ねた。

 「これは何なの」

 「人間の中にはね、時々地底界の魔物が巣くっているんだ」




 ラディは周辺に向かって次々と鞭を繰り出し、釣りでもするかのように、肉食獣を中央ステージ上に引きずり出した。




 肉食獣はしばらく床でもんどりうったあと、ラディに警戒して一ヶ所に密集した。そして身体を溶かし合って、もっと巨大な一匹の獣になってしまう。反撃を考えているようだ。




 「ステップ・バック!」

 ラディが鞭で床を叩いて一喝。獣はビクッと震え上がった。

 「ステップ・バック! 地底界へ下がりなさい」

 (続く) 




2-4

【2ー4】


 巨大肉食獣はラディに向かって吠えた。ラディが振るった鞭をがっきと牙でとらえる。ラディと肉食獣が鞭を引き合い、力比べが始まったーーように見えた。





 肉食獣が突然鞭をくわえたまま体をねじって跳ね上がった。その勢いでラディの鞭を奪い取ってしまう。




 肉食獣が立位でバネのように着地したのは舞の正面。肉食獣は彼女に向かって片方の前足を振りかざした。




 彼女が声をあげようとした時、肉食獣と彼女の間に何かがすばやく割って入って、攻撃をまともに食らった。

 「ラディ!」




 彼女は倒れた天使に駆け寄り、膝まずいて彼を揺すった。彼は頭を負傷していて意識がない。

 「ラディ、起きて」




 彼女は背後に冷たい気配がせりあがるのを感じた。

 「舞、怪物の報道をしな」

 複数の音声を処理したようなエレクトリックな声。彼女は肉食獣を振り返った。

 「舞、怪物の報道をしな」




 彼女は身体がガタガタと震えて息も止まりそうになった。救世主はいない。背中を向けて逃げたらやられる。彼女は意識を奮い立たせ立ち上がり、近くにあった照明をつかんだ。




 「私はキャスター舞だ」

 彼女はそれを地面に叩きつけて破壊した。

 「怪物の報道なんかしない」




 壊れた照明はバリバリと放電した。彼女は何とか安全な方向からそれを掲げあげた。そして意を決する。

 「女性を守るんだぁぁ!」




 彼女は照明ごと肉食獣の懐に突っ込んだ。肉食獣の全身にイカヅチが走る。彼女は自分も感電する前に照明を放し、しりもちをついた。




 肉食獣は立位で身体をうねらせ、断末魔をあげた。電流は獣にまとわりついた大蛇のよう。獣は彼女の目の前で、だんだん細長く身体を削られて行き、最後に電流と一緒に消し飛んだ。



 

 誰かが彼女の肩に手をおいた。彼女が振り返ると傍らにラディが立っていた。「ごめん。がんばったね」彼は彼女に微笑した。




彼女は自分が自分の冷や汗で濡れ鼠のようになっていることに気がついた。




 彼女が見回すと、肉食獣と分離した番組出演者、視聴者、裏方側がともに周辺で棒立ちになっている。立ったまま目を回しているようだ。舞はラディに助けられ、立ち上がった。

(続く)



2−5

【2ー5】


 「被害者のみなみ」

 ラディが言うと、舞がいつかインタビューした彼女が揺れる幽体になって目の前に現れた。




 「加害者の静」

 また一人現れる。警察に捕まったはずの彼女も実体を結んでいなかった。二人とも情報クローズアップに出演していないため、本体から抜け出して来たのかもしれない。

 



 「傍観者の春菜」

 視聴者の席にいた彼女が舞の前に立った。

 



 「そして、キャスターの舞」

 ラディはそう言い、四人の女性の手を近付け、重ね合わせた。

 「あなた方、男性社会でバラバラにされて憎み合ってきた。結束しなきゃ一人も助からない。力を合わせて」




 春菜は心残りらしく、彼に訊ねた。

 「ラディ教えて。どうして被害者は逃げなかったの」

 「逃げられたら犯罪って言わないよ。あなたはどうして犯罪を犯罪でなかった事にしたいの?」

 「それは」

 春菜は動揺して口ごもった。




 ラディは言った。

 「人間は犯罪を被害者の自己責任にしたがる。自分が被害に遭った時、初めてみんなの問題だって訴える。そして必ず以前の自分に裁かれる」





 春菜は反省した顔でみなみを見た。

 「ごめんなさい」

 舞と静も。

 「ごめんなさい」

 みなみはやつれていたが、瞳はくじけていなかった。




 ラディは四人の背中に腕を回してぎゅっと抱いた。そして微笑する。

 「僕、もう帰るね」




 舞は言った。「ありがとうラディ」

 女性全員がありがとうと言ってラディの首に腕を回した。彼は背中から翼を広げ、金色に輝いたかと思うと、もうそこにはいなかった。





 舞は辺りを見回した。そばにいるのは春菜だけ。情報クローズアップに関わった人間は舞たち以外、全員脱け殻のようになってしまい、多分カメラも回ってないか、あさっての方で回りっぱなし。




 みなみと静は消えてしまい、やっぱり天使の用意したゲストだった事がわかった。舞は春菜と手をとり合って幸福な笑顔を交わした。



エピローグ

 「舞、それでね」


 舞は春菜とプライベートで仲良くなった。休憩時間に控え室でメールや電話をするのが楽しい。




 春菜は一般人だがブロガーで、女性向けおしゃれファッション記事を書くことで発言力を持っていた。




 春菜の麦わら帽子やタンクトップ、サンダルの斬新なコーディネートには目を見張るものがある。今日は電話。春菜は舞に言った。




 「どうして女性の分担を考えるの? って、いつもと違う記事を書いたらウケてしまって」

 「すごいね! じゃあ私、どうして被害者の分担を考えるの? って発言する!」




 舞が楽しく会話してる時だった。付き人の立川がやって来たのでとりあえず電話を切る。

 「どうしたんですか」




 年上の立川はぶきっちょだが誠実な男性だった。彼が言葉に詰まっている。

 「なんか英語圏の人が舞さんの取材に来て・・・何言ってんだか全然わかんない・・・」





 言葉遣いまで子供っぽくなって、相当困っているようだが?

 「立川さん、英語できるでしょう?」

 「本人が日本語、話したがって」

 「なお聞きやすいのでは?」




 そのとき、二人の間にカメラをしょった黒人女性が割って入って来た。舞より少しお姉さんのようだ。豊満な容姿をしており、エネルギッシュで破天荒な笑顔が魅力的。




 「立川サン! もうプッツンでーす!」

 「ローズさん、まだ入ってきたら駄目って」

 立川と黒人女性がもみ合う。

 「もうプッツンでーす!」




 来訪者は舞を見た。

 「ハイ、舞さんはじめまして。私はローズ、一円ポッキリでシャチホコバッテ来ました! あと肉、肉ですね! つまり日本風に言うとトレビアーン!」




 彼女の明るく体当たりの日本語が珍妙でおかしい。助詞、助動詞がしっかりしてる事から、何の勉強をしてきたのか謎が深まるばかりである。舞はその後、ローズを通じて映画監督とご縁ができた。


 


(終わり)